- 著者
-
戸田 須恵子
- 出版者
- 北海道教育大学
- 雑誌
- 釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.57-64, 2004-11-30
母子相互作用における認知の発達(言語・遊び)を生後5ヶ月から2歳まで縦断的研究をするため、第1子を持つ母親へ研究協力を求め、27組の母子が参加した(男児16名,女児11名)。本研究は、5ヶ月児への母親の反応、乳児の注意、親の役割に関する自己意識に焦点を当てそれらの関係を検討した。乳児が5ヶ月に達した時、家庭訪問を行い1時間の日常生活場面と母子遊び、一人遊びを30分観察した。日常生活場面では乳児行動と母親の反応について頻度数を分析し、母子遊びでは乳児の注意を1秒単位でマイクロ分析を行った。さらに、質問紙によって親となる事や子育て観に関する情報を得た。結果は、乳児は観察中ネガティブな声を出すことが多く、母親の反応については、社会的反応や養育的反応が多く見られた。乳児の注意については、おもちやを見たり、母親の手元を見る時間が多かったが、周りを見る時間が最も多かった。男児はおもちゃを見ている時間が女児より長く、女児は母親との共同注意が男児より長かった。又、母親の反応との関係を見たところ、全体的には有意な関係は認められなかったが、男女差が見られた。男児においては、母親がネガティブな声に反応する事と乳児のおもちゃへの注意と正の相関が認められ、母親の声への模倣と母子遊びで母親に注意を向けることと正の相関が認められた。女児においては、ネガティブでない声への反応と母子遊びで母を見る事と負の相関が認められた。母親の役割に関する自己意識の結果は、親になる事において男女差が認められ、女児を持つ母親ほど親になった事に満足していた。又、男児において子育てについての自信・満足感と母親の養育的反応との間に負の相関が認められた。即ち、子育てに自信のない男児の母親ほど乳児行動に対して養育的行動で応えていることが明らかとなった。これらの結果はさらに、詳細な検討が必要である。